皿そば日記

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<<   作成日時 : 2010/08/04 12:28   >>

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 東大寺別院が防府にある。或るひとりの僧が関係しているという。岩国を後にして防府へ向かった。新幹線は防府を通過してしまうが、車は自由がきく。

 東大寺の全焼。今の世なら嘆きが全国を覆うだろう。かような事態が平安時代末期に起きた。平重衡が火を放ち東大寺は炎上してしまう。灰燼に帰した東大寺の再建に、高齢を顧みず献身的に務めた僧が防府に深くかかわる。俊乗坊重源である。再建のための良質かつ大量の材木は、周防の国から拠出することになった。重源は周防を訪れ、阿弥陀寺を築いて陣頭指揮をする。実に重源61歳のときという。平均寿命からして並大抵の覚悟ではない。
 7月下旬の暑い日の昼頃、阿弥陀寺につく。“東大寺別院阿弥陀寺”の石碑に迎えられ、木立に包まれた参道を進む。自然石を丹念に並べた石段を10段ほど踏むと仁王門がある。仁王門には金剛力士像(重文)があり、その手前に大きな湯釜がある。湯釜といえば奈良東大寺の大湯屋を連想する。やはり重源だなと納得がいく。

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 その昔、材木の伐採・運搬に従事する人のために、風呂をつくって厚生に努めたという。使命だから、報酬を得ているから、劣悪な環境でも働くのが当然だろう。重源はそう考えなかった。働く人を大切にした。むろん、再建の意義を幾度も話して聞かせたことだろう。目に見える成果のみを追及し、人の思いを切り捨てる傾向のある今の世を、重源はどう見るだろうか。当時に事業仕分け上があったら、湯屋はまず第一に廃止となるに違いない。
 旅も、体温を超えるかという暑さに疲れを感じていた。本堂(1731年再建)に伺うと、どうぞ自由に上がって休んでくださいとある。これ幸いと、諸堂に向かって戸の開け放たれた側部屋に腰を落ち着ける。他に人はなく、静寂に包まれる。机の上のノートに目を通す。汗をかいた身に風が心地よい。これも重源大和尚のはからいかもしれない。

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 防府天満宮を参拝する。朱に塗られた重層楼門が聳える。朱の中に浅黄色の連子格窓が映え、施された彫刻は極彩色に近い。楼門をくぐると、回廊に包まれて正面に御社殿がある。こちらは、落ちついた色合いで、質素な中にも風格が漂う。自然と感謝とお願いを込めて頭を垂れた。
 防府天満宮は、菅原道真公が太宰府に赴く際に防府に立ち寄り、この地を気に入り死後帰ってくると約束されたことを機縁につくられたという。日本で一番古い天満宮でもある。これほど美しく立派な天満宮ならば、道真公も喜ばれるだろう。重源も、復興事業の成功を天満宮に祈り、成功後は天満宮の造りかえや宝物を贈るなど尽力したという。お礼は大切なことと反省する。

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 防府に宿を取り、夕食を兼ねて近くの小料理屋Yに行った。地元の常連さんが集う店で、しばらく皆の耳を傾けていた。土用の丑の日で、女将が鰻の小鉢を勧めるが、皆一様に昼に食べてこれから家にもあるからと遠慮する。三回も食べたくないと口々に言い可笑しかった。昼に食べなければ済むことなのに、律儀な土地柄だ。地元の防府高校が県大会決勝に進み、後一歩で甲子園だという。結果の出る前に、寄付金をどうするか心配する。楽しい集まりだ。
 「金太郎って何ですか」と肴の質問をきっかけに、話の中に加わる。毛利氏庭園の秘話、観光客の素通り、国分寺の修復など、興味深く伺った。中には市会議員さんもいる。旅先の土産を持参し、私もお裾分けにあずかった。気楽に集まって話に興じる。楽しい夕べとなった。

 防府に来て何か疲れがとれたように思える。人を急がせず、休みもとって着実に歩めとこの町は伝えているのかもしれない。そういえば、防府天満宮の春風楼もそうだ。十代藩主毛利斎煕公が五重塔の建立を進めたが不慮の支障があり、工事は中断したという。不慮の支障じゃない、金がなくなったと地元の人は遠慮なく言う。しかしその後、塔の一層部分の組物を生かし楼閣にして完成させる。今では、楼上から市内を見渡せる格好の休息所になった。拝む対象が、人々の休息所になったのだから、防府らしい。

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 周防国分寺の門前の木立でも、郵便配達の人が立ち止まり、涼をとりながら次なる配達先を確認している。豊富な歴史資産をことさら強調するでなく、人々の憩いの場所として生かしながら守っているのが防府の町かもしれない。重源が人々に施した慈悲の心が、今なお息づいているかのようだ。

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